人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ヤマガタ発!


山形出身/在住の文化人や作家の作品、山形にまつわる著作を紹介する企画です。
by plathome04

門脇厚司 『子どもの社会力』

子どもの社会力 (岩波新書)

門脇 厚司 / 岩波書店


「社会力」とは何か。本書では、それを「社会的動物ないし社会的存在たるに相応しい人間の資質能力」と定義する。似た言葉として「社会性」があるが、著者(教育社会学者・庄内町出身)は、両者をはっきりと峻別する。それによれば、「社会性」が既にある社会への適応力というニュアンスを伴う語彙であるのに対し、著者の提唱する「社会力」とは、「自らの意思で社会を作っていく意欲とその社会を維持し発展させていくのに必要な資質や能力」なのだという。こうした概念整理を行った上で、著者は、現在の若い世代には「社会性」ではなく「社会力」が欠けているのだと主張する。

そもそも子どもは、どうやって「社会力」を身につけていくのだろうか。本書は、子どもの「社会力」形成過程を追うとともに、地域/学校生活における共同性の喪失、生活空間における無人化の進行、浮遊化する人びとの拡大など「社会力」が育ちにくい現状をあげ、大人たちが若い世代に対してできること/すべきことを探っていく。

「社会力」形成にとって最も重要なのは、他者との相互行為である、と著者は繰り返す。相互行為とは二人以上の人間の間でなされる選択的な言葉や行為のやりとりのこと。人間の子どもには、相互行為に必要な能力が先天的に備わっており、それを駆使して他者との相互行為を積み重ねていくなかで「社会力」が身についていくのだという。そのためには、大人たちが徹底して子どもと関わり、適切な応答を繰り返すこと、子どもと継続的に相互行為することが必要となる。

また著者は、子どもたちの「社会力を育むもっとも重要な場は地域社会である」とする。地域は、子どもたちにとって全生活領域であり、空間としての多様さ、住んでいる人びとの多彩さも学校の比ではない。多様な人びととの交流や共同体験、すなわち「地域の教育力」こそが重要なのである。

子どもの「社会力」。それは、親はもちろん、地域住民を含む「大人たちが、子どもにまっこうから向き合い、その長い過程に腰を据えて付き合えるかどうか」にかかっているのである。

評: 鬼島史織(山形市)
by plathome04 | 2010-01-09 11:24 | 教育現場から見たヤマガタ
カテゴリ
以前の記事
ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧